エネルギーの地産地消と林業振興を先導するまちへ

持続可能な社会を目指す気仙沼では、東日本大震災の教訓からネルギーの地産地消を推進しています。震災後の復興計画策定においても、再生可能エネルギーの導入を柱の一つに。気仙沼は面積の約7割が山林であることから、地域資源の間伐材を利用した日本で初めての「木質ガス化バイオマス発熱電」の開発に挑みました。発電事業を立ち上げたのは、気仙沼地域エネルギー開発株式会社の高橋正樹さん。CO2の発生が少ない発電システムを構築・運用すると同時に、地域や日本の林業が抱える課題にも向き合い、森林整備の拡大や若手林業家の育成も進めています。ここでは高橋さんをはじめ、同社で地域おこし協力隊として活躍する鈴木拓樹さんと小石原武志さんにインタビュー。3人の視点から、地域エネルギーと新しい林業の取り組みを見つめます。

気仙沼地域エネルギー
開発株式会社
代表取締役社長 高橋正樹さん

「木質バイオマス発電の開発によって、エネルギーの地域循環と林業活性化を促進」

気仙沼産の間伐材で「木質バイオマス発電」を始めたのは、2011年の東日本大震災がきっかけでした。弊社の母体企業である気仙沼商会株式会社は、漁船の燃料やガソリンなどを扱う事業者。震災時に深刻な燃料不足を目の当たりにし、エネルギーの安定供給の大切さを思い知らされたのです。

気仙沼産の間伐材で「木質ガス化バイオマス発熱電」を始めたのは、2011年の東日本大震災がきっかけでした。弊社の母体企業である株式会社気仙沼商会は、漁船の燃料やガソリンなどを扱う事業者。震災翌日から地域への燃料供給に奔走したものの、災害時の深刻な燃料不足を目の当たりにし、エネルギーの安定供給の大切さを思い知らされたのです。

同年6月には気仙沼市震災復興計画も動き出し、私も市民委員として参加。これまでも気仙沼は「森は海の恋人」運動やスローフード運動など、持続可能なまちづくりに取り組んできたとあって、地産地消のエネルギーの必要性が盛り込まれました。こうして、自然環境に負荷をかけない再生可能エネルギーの導入が検討される中、日本ではまだ成功例のなかった小規模な木質ガス化バイオマス発熱電に着目。気仙沼は海のまちのイメージが強いですが、実は面積の約7割が山林です。その間伐整備によって生まれる未利用材を、エネルギー資源として活用できないかと考えました。

そこで気仙沼地区の約2万世帯にアンケートをとったところ、山は持っていても間伐できずにいる人が多いことが判明。山主の高齢化や木材価格低迷の影響を受け、放置された森林が多いこともわかりました。そもそも間伐とは、豊かな森や土壌を育てるために必要なこと。森の養分を育むことは、海の恵みにもつながります。また山の手入れをしなければ、土砂崩れなどの災害を引き起こす恐れもあります。これは気仙沼の課題であると同時に、林業の衰退が進む日本の課題。その解決の糸口を見いだすためにも、地域の間伐材による木質ガス化バイオマス発熱電の事業化と林業活性化のための体制づくりに取り組むことにしたのです。

そして震災翌年の2012年、気仙沼地域エネルギー開発株式会社を設立。ドイツAHT社の発電設備を導入し、2014年には日本初となる木質ガス化バイオマス発熱電プラントが完成しました。

私たちの発電所では、ほかの発電施設の多くが捨てている発電時の「熱」も大切なエネルギーとして地域に供給しています。街中に発電所を建設し、近隣の「サンマリン気仙沼ホテル観洋」と「気仙沼プラザホテル」のご理解を得て、施設内の冷暖房や給湯の熱源として活用していただいています。

間伐材のチップを熱分解して木質ガスをつくり、エンジンを回すことで発電する木質ガス化発電。気仙沼市内の森林面積や間伐によって資源化できる木材の期待量などから、発電量を毎時800kw(平均的な一般家庭1,500世帯分の電気量に相当)に定めました。そのために消費する間伐材は、年間8000トン。この規模であれば、気仙沼の山々を10年に一度間伐すれば十分に燃料材が調達できます。10年後にまた同じ山へ入っても樹木は育っていますので、森の環境を壊すことなく持続することが可能なわけです。

間伐材をチップにして資源として活用

燃料の間伐材は地元森林組合や材木店から仕入れるほか、個人の林業家からも購入。さらに、自分の所有林に入り手入れを行う自伐林業家を育成する研修制度「森のアカデミー」をはじめ、山林を所有していない林業従事希望者と山主を橋渡しする仕組みを作り、森林整備の人手や間伐材の安定確保に努めています。また、間伐材の買取価格の50%を気仙沼の地域通貨「リネリア」で支払うことで、山への対価を里で循環する仕組みも整えました。こうした燃料材の生産からエネルギーの創出・対価の循環まで、持続可能なつながりを育むことによって、地域や環境のため、ひいてはSDGsにも結びつく取り組みを少しずつ広げてきたのです。

スローフード気仙沼のメンバーがデザインした地域通貨「リネリア」。
気仙沼のリアスの海・里・森・風をイメージしたイラストが特徴的です。

自分たちで一から体制をつくるのは本当に大変でしたが、地域の皆さんが「気仙沼をより良いまちにしていこう」という強い思いで協力してくださったおかげで、ここまでの仕組みを構築できたと思っています。特に震災では沿岸部の被害が甚大でしたから、真っ先に相談した山の方々は「海のまちの復興ために、私たちの出番が来たんだね」と、快く力を貸してくれました。山の木を使って里で発電し、電気を売った対価でまた木を買い、その循環が山・里・海に恵みをもたらす。川上から川下まで一貫した循環型社会の実現に向けて、エネルギーの地産地消を拡大していきたいですし、地域の中に更なる利益を生み出せる事業として発展させていければと考えています。全国に先駆けてスローフード運動や持続発展教育を進めてきた気仙沼だからこそ、世界のSDGsのトップランナーとして持続可能な地域社会を目指し、心豊かな暮らしやつながりを築いていく。これを実現し、この取り組みをほかの地域にも広めていくことが、震災でいただいたたくさんのご支援に対するせめてもの恩返しになると信じて、日々挑戦を続けていきたいです。

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「環境保全や防災にもつながる間伐。山の手入れの大切さを伝えていきたい」