唐桑海友会 会長
伊藤 惇 さん

環境を守る

漁師の取り組み

先人から受け継ぐ文化財や海の豊かさを守っていく

リアス海岸特有の起伏に富んだ地形は、気仙沼の海岸線に美しい景観をもたらしています。代表的なスポットの一つが、2011年に国の天然記念物に指定された「九九鳴き浜(くくなきはま)」。乾いた白砂を踏むと「クックッ」と鳴ることから、名付けられたと言われています。この環境を約30年守り続けているのが、漁師OBを中心に結成されている「唐桑海友会」です。会長を務める伊藤 惇さんは、元マグロ漁師。大西洋でプラスチックごみの危険性を目の当たりにした経験から、海を守るための清掃活動や子どもたちの環境教育に携わるようになりました。世代を超えた交流を通じて、地域の自然・文化を守り育てる取り組みをお伝えします。

「美しい海と故郷の景色を守るべく、元漁師たちが清掃活動をスタート」

三方を海に囲まれた唐桑半島は、自然環境に恵まれた場所。波の穏やかな内湾ではカキやホタテの養殖が盛んで、荒々しい外洋に船を出せば魚がたくさん獲れます。唐桑で生まれ育った私は、15歳の春から漁師になり、マグロ延縄船で世界の海を巡りました。長い航海を経て帰港する時、船上から唐桑の「九九鳴き浜」が見えてくると、「ああ、無事に帰ってきたな」と安堵したのを覚えています。九九鳴き浜の美しい渚は、唐桑のマグロ漁師にとって故郷を象徴する風景でもあるんです。

「唐桑海友会」会長の伊藤惇さん

この浜の清掃活動を1993年から行っているのが、地元の漁師経験者らが集まる「唐桑海友会」。唐桑半島の西部に位置する九九鳴き浜へ行くには、山道を歩いて森を抜けるか、船で迂回しなくてはいけません。浜で拾い集めたごみは船で運び出す必要があるので、 船を動かせる我々が力になれればと思っています。

陸側は林に囲まれている九九鳴き浜。手付かずの自然が残っています

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「海のプラスチックごみ削減に向けて、
子どもたちの環境学習も支援」