株式会社臼福本店 代表取締役社長
臼井 壯太朗 さん

持続可能な漁業が

目指すもの

水産資源や日本の漁業を次世代へ引き継ぐために

気仙沼の漁業発展を支えてきたのが、伝統漁法でもある遠洋マグロ延縄漁。世界でもマグロ消費大国として知られる日本ですが、近年は漁船漁業の衰退や担い手不足が深刻化しています。この問題に一石を投じるのが、気仙沼に本社を置く漁業会社『臼福本店』の5代目社長・臼井壯太朗さんです。全国鰹鮪近代化促進協議会会長、水産庁お魚かたりべなども務める臼井さんは、日本の漁業課題の解決を目指すとともに、世界の限りある水産資源を守るために漁業の持続可能性を発信。絶滅危惧種に分類されていた大西洋クロマグロ漁では世界で初めて、海のエコラベル「MSC認証※」を取得しました。さらに漁師が働きやすい環境づくり、子どもたちの食育など、水産資源や漁業を次世代へつなぐ挑戦をご紹介します。

※MSC認証とは…MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)の厳格な規格に適合した漁業で獲られた持続可能な水産物にのみ認められる証。通称、「海のエコラベル」。

「日本で衰退が進む漁業を、未来ある成長産業へと変えていく」

創業1882年の臼福本店は、気仙沼を拠点とする漁業会社です。現在は遠洋マグロ漁業をメインに、7隻のマグロ延縄漁船「昭福丸」を所有。スペインのカナリア諸島や南アフリカなどに漁船基地を置き、大西洋やインド洋で操業しています。

昭和初期頃に撮影された、旧臼福本店前の魚河岸の様子

かつて日本は世界最大の漁業国でしたが、近年は衰退の一途を辿っています。この20年ほどで、日本に600隻近くあった漁船が150隻ほどに減少。私たちが漁獲しているクロマグロの価格も、半値に下落しています。一方、海外ではシーフードの需要が増え、特にヨーロッパでは漁業が成長産業へ。魚食文化がある国の中でも、世界で日本だけ漁獲量が減っているのです。

「臼福本店」代表取締役社長の臼井壯太朗さん

日本の漁業衰退の原因は、IUU漁業(違法操業や乱獲)による魚の流入や養殖・蓄養漁業の過剰拡大によって、安価の魚が大量に流通していること。安さや手軽さばかりが優先され、厳格なルールを守ってきた日本漁船は淘汰されてしまいました。このままでは、日本の漁業や魚食文化が途絶えてしまう上に、限りある水産資源が枯渇してしまうかもしれない。そんな懸念が日に日に膨らんでいた頃、東日本大震災を経験。そこで食の大切さや人のつながりの尊さを再認識し、他地域にはない気仙沼の漁業や食料産業を誇りに思うようになりました。しかも世界は今、持続可能な社会へと舵を切っています。世の中の価値観が変化しつつある今こそ、食の大切さを広く伝えると共に、日本の漁業を未来ある成長産業へと生まれ変わらせるチャンスとだと考えました。

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「持続可能な漁業を目指し、国際的な海のエコラベル『MSC認証』を取得」