気仙沼ESD/RCE推進委員会委員長
齋藤 益男 さん

気仙沼市・
宮城教育大学連携センター主任運営員

淺野 亮 さん

世界につながる

「気仙沼ESD」

地域を探究し、世界とつながる。“グローカル人材”を育てるまち

 持続可能な社会を目指す国際目標「SDGs」が世界に広がる今、その創り手を育む「ESD(持続可能な開発のための教育)」が注目されています。気仙沼には「森は海の恋人運動」や「スローフード運動」などが根差し、早くからESDを土台とした地域ぐるみの教育が推進されてきました。国際的評価も得ている「気仙沼ESD」の特長は、自然環境、食文化、伝統文化、国際理解、防災・減災、海洋など、地域の特色とネットワークを生かした多様な学びを展開していること。地域と学校のつながりを大切にしながら、ローカルへの深い理解とグローバルな広い視野をもった人づくりを目指しています。こうした子どもたちの成長を身近で見つめてきたのが、気仙沼ESD/RCE推進委員会委員長の齋藤益男さんと気仙沼市・宮城教育大学連携センター主任運営員の淺野亮さん。自らも教員として教育現場に長年携わっていたお二人に、気仙沼ESDの歩みを伺いました。

「海と生きる環境や地域文化が礎となり、先進的にESDを実践」

齋藤さん

宮城県の北東端に位置する気仙沼はかつて「陸の孤島」と呼ばれ、市内に大学がないという課題もありました。このような環境にあっても、地域の教育力向上につながる「森は海の恋人運動」や「スローフード運動」などが市民に浸透。また「世界に開かれた港町」として、国際的視野も養われてきました。こうした特性から、都心部に負けない「地域に根差し地域を生かす教育」を一層進めるべく、教員の指導力向上と子どもたちの生きる力を育むため、市外にある大学との協働を図ることになりました。

気仙沼ESD/RCE推進委員会委員長の齋藤益男さん

気仙沼市・宮城教育大学連携センター主任運営員の淺野亮さん

淺野さん

こうして教育の質を高めようという気運の中、気仙沼での「ESD(持続可能な開発のための教育)」が始まります。ESDを学校教育の中核に置くきっかけとなったのは2002年、全国に先んじて小学生の英語学習や環境教育に取り組んでいた面瀬小学校が、アメリカ・ウィスコンシン州のリンカーン小学校と共同で国際環境学習を開始したこと。これを機に気仙沼市教育委員会では宮城教育大学との連携を強化し、気仙沼市内の他の学校でもESDを展開しました。たとえば階上小学校はスローフード学習、唐桑小学校は環境学習、月立小学校・旧落合小学校・旧水梨小学校では伝承文化など、各地域の特色や課題を踏まえて協働的に探究学習を行う「気仙沼ESD」を進めてきています。

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「学校間、地域と学校、産学官民が協働し、
探究学習を推進」